商業BL小説を読んで苦しんでいる話

こんにちは。目にとめていただきありがとうございます。
初めてはてなブログを利用する腐女子です。今回は1冊の商業BL小説について語りたくてブログに登録しました。
未読の方は是非手に取っていただけたらと思います。

ここから先はネタバレを含みます。
語彙力の著しい低下により言葉が汚くなっている部分もあるかと思います。ご注意ください。








まずどんな本なのか説明します。
題名は「誘惑のボディーガードと傷だらけの数学者」。
主人公は深見顕。元軍人で傭兵、老若男女問わず落としてきたひとたらしでもある屈強な戦士。受けです。このひとの視点で物語が進んでいきます。
もうひとりは南雲陽司。天才的な頭脳を持つ数学者だがそれ以外の事はからっきしダメな超特化型。攻めです。
孤独な数学者×ガチムチのボディーガードです。
このふたりが紆余曲折を経て愛を育むお話です。
作品のサンプルや作者の七川琴先生のツイートはこちらからご覧ください。

ぱっと目に入る表紙からいきます。
なんだこのけしからん表紙は。
なんだこのシャレオツながらもエロいピンク。
なんだこのシャレオツながらもスケベを感じるフォント。
なんだこのふたりの体格差。なんだこの腰に当てた手。
なんだそのほっそい太腿に押し上げられてるふっくらとしたもちきんちゃくは(精一杯のやわらかい表現)。
これはアレでしょ、毒持ってるカエルとかが「自分は毒持ってっぞ!」とまわりにアピールするために派手な体の色してるのと同じ原理でしょ。「この本はスケベやぞ!」って教えてくれてるんですね、なんて親切なんでしょう。

昨日の夜にふらふら入った書店で偶然書籍版を見つけて即買いました。予備知識はゼロでした。ジャケ買いでした。
元々南雲さんみたいな、背が高く色白でヒョロくて内向的な男(決して女顔ではない)が好みで、本探すと大概受けになってましたのでそういうのばっかり読んでました。今までガチムチ受けを読んだ事がなかったんです。

結果は大当たりでした。
福引きの1等賞です。脳内でベルめちゃくちゃ鳴らしました。

深見さんマジで海外ドラマの主人公みたいでかっこいいんですよ。冒頭の銃撃戦の場面や、スチール缶をペラペラにつぶす場面、海外の友達と小粋な冗談をはさみながら会話する場面など挙げたらキリがないんですがとにかくかっこいい。パワーisジャスティス。南雲さんとコミュニケーションをとろうとあれこれアプローチする姿や、時折見せるほの暗い表情や暗い話がたまりません。
南雲さんは予想どおりド好みのタイプでした。背ばっかり高くて細くて色白で内向的性格に加え、黒髪、癖毛、メカクレ、そばかす、美人なのにもっさりしてるせいで冴えない印象etc…みたいな感じで刺さる刺さる。おどおどしながらも深見さんと少しずつコミュニケーションを取る姿がいじらしかったです。天才の天才ぶりもしっかり見せてくれます。

南雲さんと同じ大学に在籍している美人数学者の天羽ちゃんや、深見さんとは古い友人で何でも教えてくれるブーンさん、南雲さんの兄で嫌味全開な成一さん、深見さんの上司グラハムさんなどなどサブキャラクター達も非常に個性が際立っていて素敵でした。
寝る前に少しだけ読むつもりがいつのまにかページをめくる手が止まらなくなっていて、興奮が沸点超えるたびに出てくる奇声を枕に顔を押しつけて殺しながら、ふとんの中でびったんびったん暴れました。

特に好きな場面は郵便物事件です。私なんぞの語彙力では到底この場でお伝えする事は叶わないのですが、ほんまに半端じゃないです。
もう脳内でホイットニー・ヒューストンが爆音で熱唱してました。アドレナリンがぶあああっと出てめちゃくちゃ熱かったです。体が。物理的に。ここは是非とも手に取って確認していただきたいところです。おすすめです。
とにかくテンションがブチ上がってて、暴れてる間に「このままふたりで結婚してくれ~!!!」とか「第2巻とかあるかな~??ないかな~??」とか「2時間くらいの長編アニメにしてくれ~!!!海外ドラマ風の~!!!」とかマジで好き放題に言ってました。





しかし不満がまったくなかった、というと嘘になるんです。
福引きの1等賞でしたが、特賞ではないんです。
言いたい事は4つ。すべて終盤の話です。

1つ目。ふたりともはじめてだった。
性的な経験の話です。
南雲さんはひと付き合いどころか自分の髭もまともに剃れないようなキャラクターでしたので、そういった経験がまったくない事はすごく納得しました。
しかし深見さんは違います。まったく逆です。ときに力でねじ伏せ、ときに人心を操り、数々の死線をくぐり抜けてきた歴戦の戦士です。喧嘩だってハニートラップだってお手のものです。軍にいたころのあだ名は「ジェダイのサメ男」と「セイレーン」でした。それが処女とは。思わずお前マジかよ…と天を仰ぎました。
(ターゲットには絶対に許さなかった、ならまだ分かる)(しかしプライベートで処女はないやろ)(ひとりで慣らす訓練しとるゆうたやんか元カレ元カノおるやろどこかに)(そこは百戦錬磨の受けが童貞の攻めを舐めてかかった結果、返り討ちにされてあんあん言わされる流れやったんちゃうんけ)みたいな事が脳内で高速回転しました。
しかし感じ方には個人差があります。それが好きなひともいます。終盤の試し読みは出来ませんから自分の趣向に合わない事もあります。
そう思ってはいてもやっぱり残念な気持ちがぬぐえず(どうなんだろう、そっちの方が喜ぶひとが多いんだろうか…)とひとりで悶々としました。

2つ目。挿し絵が深見さん寄り。
これはエロシーンの挿絵に限った話です。日常のシーンでは大体同じくらいの比率でした。
元々この本は挿絵が多めでホクホクしていたんですが、なんとエロシーンの挿絵だけで4枚もあります。豪華ですね。
深見さんは1、2に顔のアップ、3、4に全体図でした。対して南雲さんは1に顔のアップ、2、4に手とホワイトチョココーティング(精一杯のやわらかい表現)でした。
個人的に3か4で服を取り払ったときの体格差が見たかったなあとしょんぼりしたのち(でも受けにフォーカスしがちなのはBLじゃあよくあるしなあ…)と1つ目と同じようにとひとりで悶々としました。

3つ目。エロシーンが長い。
身も蓋もない言い方をしましたが事実です。中盤までドバドバ出ていたアドレナリンが切れると一気に睡魔との戦いになりました。読み始めたのが18日午前0時を過ぎたあたりだったので本来ならとっくに寝てる時間ですね。
どれぐらい長いかというと、
219ページ14行目~291ページ7行目までです。
71ページですね。
文字数に換算すると、
この本の1ページあたりのMAX文字数が、
41字×18行=738字。
改行などを考慮して1ページあたり平均650字として、
650字×71ページ=46,150字。
七川先生、正気ですか。
エロシーンの中身はそりゃあもう大変にエロくて、すこぶるエロくて、めくるめくエロくてみたいな言葉しか出なくなるくらい完膚なきまでにエロかったです。ごちそうさまでした。
でもここまで長いとふたりの体が本気で心配になってしまうんです。自分の脳に「これはファンタジーだ」といくら言い聞かせても効果がなくなるんです。
しかし止められませんでした。この時点でまだいくらかページが余っていたので(ここでたっぷり愛し合った後で一気に地獄に突き落とす予定ではないだろうか…えっ2巻の可能性期待していい?えっするぜ?)と考えると最後まで読まずにいられなかったんです。今考えるとそんな可能性はかぎりなく低いのに、あのときは途中放棄するなんて考えられませんでした。それくらい引き込まれてました。第2巻を熱望してました。

4つ目。すべてを語ってしまった。
ぶっちゃけ1~3の事柄があってもこの本が好きな気持ちは変わらないのでさほど問題ではありません。3つまでだったら最高でした!まだまだ読みたいです!みたいな感想を送る気でいました。しかし4はマジで洒落になりませんでした。
エロシーン後の余っていたページは少しのエロをはさみつつの深見さんとブーンさんの会話、伏線の回収やちょっとした謎解き、南雲さんが海外の名誉ある発表会で壇上に立つシーンに使われていました。これらすべてを291ページ9行目~332ページに詰め込んでいました。ページ数にすると41ページになります。
この41ページの中で深見さんは本格的に日本で腰を据えて働き始めました。ブーンさんにノロケメールを送りました。長年抱えていたトラウマを恋人のおかげで克服しました。発表会で自分の話をされたときはちょっと涙ぐんだりもしました。
南雲さんは髭剃りも車の運転も自分で出来るようになりました。どもったり口ごもったりせずに話せるようになりました。発表会のときには髪をさっぱり切って見違えるほど男前になって、発表のド頭から自分の伴侶の話をするほど肝が座った人物になっていました。
回収した伏線や解いた謎は、キャラクターの根幹に関わる非常に重要なものでした。
私は悲しくなりました。
どうしてここに至るまでの過程を、もっと長い時間をかけてゆっくり見せてくれないんだと。
矢継ぎばやになった物語においてけぼりにされたように感じた事や、南雲さんが私の好みからはずれたのもショックではありましたが、それの比じゃないほど私は、七川先生がこの物語の風呂敷をはやばやと畳んでしまった事がショックでした。
解決しなくてはならない問題や謎はなくなってしまった。キャラクター達の関係性や内面は大きく変わってしまった。もう語るべき事柄が、物語を続けるための材料が、41ページの中ですべてなくなってしまったんです。
なんだか(1冊ですべて書ききる)という強い意志を感じました。
単発作品として契約がなされているのか、単発作品としてでしか執筆予定がないのか、何か事情があってコンスタントに執筆が出来ないのか。そのあたりをいち読者があれこれ考えても無駄な事は分かっています。
しかしそれでも、そうであっても、どうして1冊の中ですべてを語ってしまったんですかと嘆かずにはいられません。
私は2巻でも3巻でも、もっと長くこの物語を読みたかった。読ませて欲しかった。


ここまで言っておいて今さらですが、私は決して七川先生を貶めたり、こき下ろしたり、傷つけたいわけではありません。
でもいざ編集部宛の感想を書こうとすると、このブログのような頭の悪いヒステリックな発言しか出てこないんです。
この本の事が大好きなのは間違いなく事実なのに。

はじめて会ったふたりが悩んだり苦しんだり戸惑ったりしながらも、お互いに少しずつ歩み寄る姿や、自分達の内面を明かしていく姿を丁寧に丁寧に描写されていて素敵でした。
素直な感想を伝えればいいのか、ポジティブな感想だけにすればいいのか。素直に言えば七川先生に負担をかけるんじゃないか、モンスタークレーマーにはなりたくない…みたいな事を考えていると熱量ばかりが馬鹿みたいにふくれて苦しいです。
どうして1冊の商業BL小説でここまで熱くなっているのか自分でも分かりません。

もうどうにもならなくて、こうしてネチネチとブログにぶちまけています。
最後にもう一度言いますが、未読の方は是非手に取っていただけたらと思います。私は苦しいですが間違いなく最高ですので読んでみてください。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。